Steady
私の言葉に優の顔から

笑顔がふっと消えた。


ゆっくりと下へ視線を向けると

唇を噛み締め、

テーブルの上に

ふわりと組まれていた両手が

プルプルと小刻みに震え始める。


それとは対照的に、

俯いていた敦の顔が

徐々に上げられ、

私をとらえると

優しい眼差しで見つめた。


その表情は、

まさにあの頃の敦、

そのものだ。


それを見て、

不確かだった気持ちが

ようやくはっきりと浮かび上がった。


「彩加ちゃん」


視線を落としたままの優が

声を震わせて私を呼ぶ。


その響きがあまりにも冷たく、

一瞬の内に心が

凍りつくのを感じる。


ふうっと長く深い息を吐くと

優が言葉を続けた。






< 322 / 342 >

この作品をシェア

pagetop