Steady
小学生の頃は、

愛だの恋だのなんて

知らなかった。


ましてや、

敦があまりに近くにいたから

それが当たり前すぎて

分からなかった。


でも、あれから10年経った今、

ようやくこの想いが

『恋』なんだって分かった。


皮肉にも優と出逢えたから、

敦への想いが

確かなものになった。


やっと、やっと

自分自身に素直になれた

安堵感からなのか、

私の目から涙が

すうっと流れ落ちた。


「ありがとう」


ぽつりとそう言ったのは

敦ではなく優だった。


あまりに意外な言葉に、

私は思わず優へ視線を向ける。


それまで俯いたままだった優は、

顔をしっかりと上げ

いつものふわりとした

笑顔を見せていた。






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