Steady
「彩加だってちゃんと

 前に進んでんじゃん。

 こうして俺のために

 オシャレしてきてんだからさ」


「これが……、

 前に進んでるの?」


不思議に思う私に

敦がにっこりと笑って深く頷く。


「自分のためじゃなくて、

 俺のために自分を

 磨き始めたんだろ?」


敦の言葉が胸にじんわり響く。


それまでの私は

“自分のこと”だけで精一杯だった。


でも今の私は

“相手のこと”を考えて

自分を変えようとしている。


それが敦の言う、

『前に進んでる』ということなんだ。


私は敦へ視線を向けると、

小さく頷きふわりと微笑んだ。







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