Steady
「いただきます」


律儀にちゃんと

手を合わせてから、

本場香川と比べると

本当に申し訳ないほど、

自己流

なんちゃって釜玉うどんを

すする。


麺に玉子が絶妙に絡まる

このうどんが私は大好きだ。


1本1本を味わうように

口に運びながら、

私はぼうっと

これからのことを考え始めた。


『卒業論文に専念したいから』


そう言って大学入学と同時に

勤め始めた塾の講師を

辞めたものの、

今まで大学と塾との往復で

充実していた日々が、

世の中に

取り残されてしまったかのように

ぷつりと時が止まってしまった。



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