御曹司なんてお断りっ◆
何度目かの着信に
チラッとスーツのポケットに視線を移す。
その視線に気が付いたのだろう、
彼女は冷たい視線を俺に向けた。
「・・・仕事があるなら、お帰りになったらいかがですか?」
「うん。でも俺、君に会いたかったから来たんだ。」
マジで本当。
気になってる。
でも、そろそろやばいかも。
うちの『優秀な秘書』がぶちキレるかも。
神経質そうな顔を思い出して、
心の中で、手をあわせた。
すまん。
「ね。
名前は?」
「…」
「会社はどこ?制服から@@@コーポレーション?」
「!」
あ。当たったみたい。
正樹兄ぃすげーな。
何度目かの着信が胸ポケットで震える。
「あの…
お仕事があるなら
早く、帰られたら?」
「うん。
また、明日ここで会おうね?」
「はぁ?!」
「じゃ。明日ね♪」
あんまり押しても効果はないし、
さっきから、秘書がありえないくらいコールしてくるし。
とりあえず、
にっこり笑って席を立つ。
「あと、俺 昴。
花京院 昴。
すばるってよんで」
正樹兄ぃに「ありがと」
と、手を挙げると「あんまり迷惑かけるなよ」って
やっぱり
子ども扱いされた。
俺、もうすぐ30なんだけど。
いつまでたっても甥っ子は甥っ子か。
なーんて思いながら、
ちょっとレトロなドアを押した。
むわっとした空気が俺を包む。