御曹司なんてお断りっ◆

志保は、あわてて
手を前で振りながら動揺する。

「ーーーっなんで…?そのっ…」

「ごめん。乱暴にキスしてーーー」

俺は、ゆっくり志保を抱き寄せて耳元でささやく。
ーーファーストキスだったのに。ごめんな。

志保の耳がみるみる赤くなる。

いや、恥ずかしいのはこっちも一緒だって。


でも、そんな恥ずかしさよりも
志保が俺に好意を持っている。

そのことの方が重要だ。



そのままぎゅっと志保を持ち上げる。

「きゃ。」

お姫様抱っこになった志保はバランスを取るために
俺の肩に手をまわした。

その手のぎこちなさに、
俺の方が照れてしまう。



「--志保。愛してる。
 志保の、全部頂戴?」


あぁ。これで愛しい志保と一つになれるーー

と、甘い誘惑で一杯になった俺の耳に届いたのは
絞り出されるように嘆く、
志保の声だった。


「----御曹司なんて…無理…デス…」






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