御曹司なんてお断りっ◆
彼女は志保を一瞬見て眉をひそめるが、
すぐに、にっこりと志保に笑いかける。
「いらっしゃいませ。建志さんのお連れ様?」
「はい。妹の志保です。」
妹と名乗ったことでわかりやすいくらいの
ほっとした表情で
にこやかに、席に案内してくれる。
「ねぇ。建志。あの女性は何?」
「うわぁ。修羅場のカップルみたーい。」
席について彼女のおすすめらしいメニューをいくつか注文した後、
志保は、面白そうに笑う建志に話しかける。
「彼女は、前にナンパ野郎に絡まれているところを助けたんだ。
よくあるパターンだろ?
この店のオーナーの娘さんでよく手伝いをしている。
助けてくれたお礼にと言われて、
ここに連れてこられて、それからこの店の味に虜。
おいしいから、志保も気に入ると思うけど・・・?」
「知ってる。」
「え?」
「おいしいのは知ってるわ。来たことあるもの。」
志保はごくりと水を飲んだ。