御曹司なんてお断りっ◆
世間は華やかなクリスマス一色。
イルミネーションもザワメク感じも悪くない。
それなのに、志保はやけに重く感じるドレスを引きずりながら、
またため息をついた。
「志保。また…。
無理やり連れてきて悪かったよ。
でも、笑ってる方がかわいいから、俺の隣で笑って?」
ーーーそんなこと言われても。
「・・・・私、こういう場所…苦手なのに。」
昴さんはポンと私の頭に手を乗せて
ふんわりと笑った。
グレーの瞳で優しく私を見てから、またにっこり笑った。
「でも、俺もそのドレスに身を包んだ志保を見たかったし。
大丈夫。志保はただそばにいるだけで。」
ホント、昴さんはこういうの慣れてるから
気にならないんだろうな。
どこかのお嬢様や女性たちの熱い視線と私に注がれる敵意の視線。
でも、付き合うようになってわかった。
昴さんは
『仕事』となると、笑わない。凍りつくような作り笑い。
私に向けられるようなふんわりとした優しい笑顔は見せない。
心がじんわりと掴まれるような、
あのグレーの瞳に見つめられると、胸が熱くーーー
「・・・・って私は何を考えて・・・」
「?志保?」
「え?いえっ。なんでもーーない・・・」
志保はごまかすように赤くなった顔を隠しながら昴の一歩後ろに下がった。
会場にはもう招待客や会社の関係者やらで賑わっていた。