御曹司なんてお断りっ◆
「はー。
一目でもあえてよかったぁ」
走ってきたんだろうか、ちょっと息があがって、
うっすら汗がにじんでいる。
レトロなドアの取っ手に左手をかけてもたれた。
「よう、昴。おそかったな」
「あー。うん。
昨日の午後の分が今日までおしちゃって」
右手でちょっと額をぬぐう。
「じゃっ!
おねーさんともっと話したかったけど、
今日はマジで仕事が、山積みでさ。
おねーさんも、休憩おわり??
また、明日ね。」
そのまま、
私の返事も聞かず、にこっと笑って
たった今入ってきたドアに手をかけた。
とっさに私は、ナンパ男の
腕をつかむ。
「え?」
「あっ。あの、・・・・・」
お互い戸惑う。
私は、ちょっと息を吸った。
「志保です。
田中 志保。
昨日は大人気なく水をかけて、すいませんでした」
私はナンパ男に名前を教えた。