御曹司なんてお断りっ◆

市川さんが、現在 始様は外国で生活中で
デザイナーです。という言葉を聞いて、なんだか納得。

『香澄さん』は始様の奥様で、
体が弱く、休養中とのこと。



「始兄さんは、あんまり言葉を出さないけど、
 やさしいよ?

 ま、年が離れてるから、余計 俺に甘いんだろうけどさ。」

「へぇ。」

と、突然昴さんの元へ駆け寄ってくる男性。

「すばるーーっ。」

「----樹兄さん。」

昴は思いっきり顔をしかめて、その抱きつかんばかりの勢いの男性をにらんだ。

「こちらのかわいらしいお嬢様が、
 昴の『大切な人』?」

「あのっ 田中志保 です。 はじめましーー」

頭を深々と下げるのも待たず、
「どこの子?」「何やってるの?」「いつから付き合ってるの?」
とかいろいろ聞いてくる樹に
昴はさらに不機嫌そうに、文句を言おうとした瞬間。

不意に、かっちりとしたスーツを着こなした人が、この樹の後ろに
立って言葉を遮った。


「社長!一人で行かないで下さい。
 あ。昴常務。申し訳ございません。

 ほら、社長あちらです。」

その秘書であろう男性はぐいっと昴の前から 樹をひっぱって、
私たちに一礼をして嵐のように去って行った。


「…相変わらずですね。社長。」

市川さんが呆れたように去って行った二人を見る。

花京院 樹。現在花京院の会社をまとめる社長で、あれでも仕事ができる方なんです。と、市川さんがため息まじりでフォローする。

「樹兄さんは騒がしいだけだよ。」

昴は頭を軽く振って、疲れた様に肩をすくめた。

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