御曹司なんてお断りっ◆
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「あっ。さっきの彼女忘れ物だ」


正樹がテーブルのカップを下げようとすると、
かわいらしい紫のポーチが目に入る。



「あ。今の子?

 俺、届けようか?」

単なる親切のつもりだった。

コーヒーも飲み終わったし。



「じゃ、お願い」






俺はそのポーチをつかんで
店のドアを押した。




むわっとした空気が一瞬包む。

その空気を払うかのように俺はあたりを見回す。



「あ。いたっ!」



少し先の大通りで信号待ちをしている彼女を見つけた。


間違えない。


急いで走って追いかける。



「おねーさんっ」

彼女の白いブラウスの肩をたたいた。



「!?」

いきなり知らない人が声をかけたからだろう。

彼女は黒縁メガネの奥の大きな目を見開いて
一歩下がる。




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