御曹司なんてお断りっ◆
着信を見ると
昴さんだった。
ちょっと一呼吸おいてから
通話ボタンを押す。
「はい。もしも…」
『志保?』
聞きなれた声が響く。
店内ということもあって、少し声を潜めてつぶやく。
「…昴さん。お仕事がたまってるんじゃないですか?」
『あはははは~。
そうなんだよね。
武に監禁されちゃって~』
「武」というのは秘書かしら・・・?
「夕べは」
なんか、いろいろごめんなさいと
謝ろうとした瞬間。
『声が聞きたかったから。』
「へ?」
『志保に会いたいけど、
今、会いに行けないから、声だけでも聞きたかったんだ』
「そうですか。」
『あぁ。ごめんっ。
ちがうよ。
今のは、ちゃんと心から言ったつもりだけど?』
それから昴さんは小さな声で
『薄っぺらい口説き文句でごめんね』
と、付け加わえた。