初恋は実らない
ただならぬ私の気迫に負けたのか、おばさんは警察に電話してくれた。

幸いにも交通事故の報告は無かった。

「保険証を持ってるから、何かあれば連絡が入ると思うのよ?」

そうだ。
何かあれば、家に連絡が入るはず。
そう思いたい。


「実咲ちゃん、お昼まだでしょ?
何もないけど食べてって」

ふと時計を見ると、長針と短針が天辺でくっつく頃だった。


「いえ・・・私そろそろ失礼します」


「だってあのバカ帰って来てないし。
実咲ちゃんはホテルなのよね?
どこのホテルか教えてくれる?」

「今朝までは祖母の病院の近くのホテルだったんですけど、明日にはもう帰るんで今夜は空港の近くのどこかに移動なんです・・・。
淳くんには私から電話します!
突然お邪魔してすみませんでした」

そう言ってロンドンの空港で買ったお土産を手渡した。


「あらまぁ、気を遣わせちゃって。でも、ありがとう。
せっかく来てくれたのに・・・ごめんね、実咲ちゃん」

「いえ、きっと何か事情があったんでしょうから。
それじゃ、おばさんもお元気で!」

仕方なく、駅までの道のりをトボトボ歩いた。

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