オカズ視線
視線


「っあ、ご、ごめん」


ドン!と音がして振り返った大学の学食内。

見ると、大学の名物男、羽間航平(はざまこうへい)が学食のおぼん片手にヨタヨタしている所だった。


「なあにやってんだよ!相変わらずドン臭せぇなあ」


ぶつかった生徒のからかい声に学食は冷ややかな笑いに包まれる。


羽間くんは、笑われてるにも関わらず、かといって誤魔化し笑いをする事もせず、ズレた眼鏡を中指で直しながら、ヨタヨタと学食内を歩いて行った。


ヒョロっとした細身の体型に、肩幅の狭い軟弱な身体。


「ヨオ、羽間~」


「あっ、お、おはよ」


人付き合いが苦手そうな羽間くんは、話かけられるとドモってしまう。

その口ぶりに、生徒たちはからかい半分、小馬鹿半分で彼の反応を伺うのだ。



バカ真面目。
ネクラ。
漫画オタク。

色んな噂が飛びかっているのに、一体どれが本当の彼の姿なのか分からなかった。


だからなのか。
彼の本性が、知りたくなったのは。



あたし、長谷川ハルナ。 大学でも、ちょっと目立つ遊び人。


羽間くんの秘密の彼女。

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