鈴姫
苦い顔をしながら、憂焔は寝台から抜け出し、椅子の上にかけてあった衣をとった。
「俺はあいつが嫌いなんだ。この間来たときだって香蘭をいじめて面白がってた。」
そして衣を身に纏うと、ずかずかと扉の方へ歩いて行く。華京はそれを目で追いながら口を開いた。
「おい、どこへ行くんだ。」
「決まってるだろ。香蘭を追いかけるんだよ。」
「馬鹿か。お前は傷を負っているんだぞ。」
「傷ならもう治った。とにかく、俺は行くからな。」
さっさと出て行こうとする憂焔の腕を慌てて掴んで叱りつけるような声をあげた。
「ちょっと待て。何を勝手に決めているのじゃ。お前は人質なんだぞ、ここから出すわけがないだろう。」
「人質?」
憂焔はくるりと振り返り、目を大きく見開いている。
「お前、俺が人質になる価値があると思ってるのか?」
「ふーん、ならないのか?」
華京が面白そうに口角をあげたので、憂焔は不審に思いながらも頷いた。