鈴姫
「香国は俺がどうなろうと気にしないぜ。むしろ殺せと願ってるだろうな。」
「なぜそう思う。」
「さあ。とにかくあいつらは俺を消したくて仕方ないんだ。今回の件でわかっただろ。平気で
俺を利用した。」
「そうだな。」
「だから、俺はもう行……。」
そう言って今度こそ出て行こうとした憂焔の腕を、華京はさらに強く引き留めた。
「駄目だ。」
「何でだよ!」
声を荒げる憂焔をじっと見たあと、華京はにっと口角をあげた。
「駄目だって言ってるんだ。今のままではね。」
華京の笑みに、憂焔ははっとした。
華京が何のことを言っているのかようやく理解した。
彼女は憂焔に誓えと言っているのだ。
国を捨てて、鏡国に加担することを。
香蘭のように。
華京の手を振り払い、彼女に向き合った。
「俺も香蘭と同じだ。俺を捨てた国に加担する気は微塵もない。」
華京の目が、それで?と先を促している。
華京は腕を組んで憂焔を探るようにみつめるばかりで、彼女の考えが全く読めず、憂焔は少し不安になりながらも先を続けた。
「ただ、香蘭と違っていることは、俺は故郷が滅ぼうがどうしようが全然構わないし、むしろあいつらを叩き殺したいって思ってる。だから…。」