鈴姫
「秋蛍様っ」
「リン!」
勢いよく戸を開けると、同時に勢いよくハルが飛びついてきた。
「わ、ハル!?どうしたの?」
ハルの小さな肩に手をやりながら、香蘭は彼女の表情を確かめた。
ハルは半泣きになりながら香蘭に縋り付いてくる。
「秋蛍が、あたしをいじめるの!」
「え?」
香蘭が秋蛍のほうを見ると、彼はふいと目を逸らした。
ハルの頭を撫でながら、香蘭は小さく息を吐いた。
「またハルと喧嘩してたんですか?」
秋蛍はいつも通り不機嫌そうに香蘭を見た。
「頼みごとをしてただけだ」
「頼みごとですって?あんた、頼みごとの意味を誤解してるよ!」
ハルが香蘭の後ろに隠れながらキーキー喚いた。香蘭は二人を交互に見ながら、首を傾げた。
「頼みごとって…。何か困ってることでもあるの?」
ハルに頼まないといけないくらい、困っていることが秋蛍にもあるのだろうか。
だとしたらとても気になる。
秋蛍はつかつかと香蘭のところまでやってきて、目を丸くする香蘭の背後に手を伸ばし、ハルを引きずり出した。