鈴姫
とうとう耐えなれなくなり、ふらりとよろめくと地面に膝をついてしまった。
それに気づいた憂焔が、慌てて駆け寄ってきて香蘭を抱き起した。
「笙鈴!」
香蘭は額を押さえながら、憂焔に大丈夫だと告げた。
なんとか意識を失わずにいられたことにほっとしていると、憂焔がきっと秋蛍を睨んだ。
「こんな修行、香蘭の身が持たない」
その口調には怒りが込められている。
秋蛍は冷めた瞳で香蘭を抱きかかえる憂焔を見下ろした。
「邪魔はしないって言ったのはどの口だ?リンのためを思うなら辛くとも見守ってやれ」
「でも」
また口論が始まりそうな気配がして、香蘭は憂焔の腕の中から出ると、少しふらつきながら立ち上がった。
「ごめんね、憂焔。私は大丈夫だから」
「……」
憂焔も立ち上がり、香蘭をじっと見つめた。
森の木々が風に吹かれてさあっと揺れた。
まだ昼日中の森の木々は、青々とした葉を陽に透かして、香蘭たちの上に影を落としている。
憂焔はしばらくそうしたあとで、ふいと顔を背けた。