鈴姫
「俺、少し街へでてくる」
「あたしも行く」
背中を向けて街の方角へ歩き出した憂焔のあとを、ハルがカサカサと落ち葉を踏み鳴らしながら追いかけた。
香蘭は二人の背中が見えなくなるまで見送ったあと、足元に目を落とした。
「私には難しいわ」
まだまだだった。
自分は心配されたり守られたりしているばかりで、巫女として役に立っていることなんてない。
焦燥感とともに気怠さが香蘭を襲った。
果たして自分が秋蛍のように、信頼されるほどの鏡の流れを扱えるようになるのだろうか。
黙っていた秋蛍が側にやって来て、香蘭に手を伸ばした。
「気づいているか?お前はすでに鈴の流れは自分のものにしている」
秋蛍は香蘭の髪につけられている鈴をちりんと鳴らした。
「鈴の流れを操る能力を秘めているものは、鈴の音を聞くと初めは我等と同じように耐え切れ
ず倒れるそうだ。だが、巫女であるお前も倒れるはずなのに倒れない」
香蘭が顔を上げると、秋蛍は微笑んだ。
「鈴の国で育ったせいでもあるんだろうが、これが証拠だ。必ずできる」
「秋蛍様…」