鈴姫


まさか彼に励まされるなんて、という驚きと、鈴の流れを手にしているという新たな発見に、香蘭は目を見開いた。


鈴の流れに耐えられるようになっているのなら、鏡の流れも自分のものにできるはず。


香蘭は少しだけ元気を取り戻し、秋蛍に笑顔を向けた。


「ありがとう秋蛍様。おかげで頑張れる気がします」


「気がする、じゃなくて、頑張らないといけないんだ。ほら、始めるぞ」


秋蛍は香蘭が落としていた鏡を拾い上げ、香蘭に渡した。


香蘭は受け取り、目を閉じて鏡の重さを手の中に感じた。




大丈夫、きっとできるようになる。




そう念じて、すっと目を開けると、鏡の中の自分と目があった。


けれど用があるのは彼女ではない。


彼女の住処、彼女を映し出すもの。


眩暈が襲って、少しだけふらついたがすぐに体勢を戻し、鏡の自分と目があった瞬間。


香蘭は何かが見えた。





白い影。




小さな少女。




あれは…、






ハル?







「リン!」


倒れようとする香蘭の体を、秋蛍が支えてくれた。


香蘭は支えられながらも、嬉しそうに顔を輝かせて彼を見上げた。


それを見て驚いたように秋蛍は目をまるくした。


「もしかたら、もう少しかも。今までとは違う感じがしました!」


「…そうか」


「はい。だから……秋蛍様?」

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