鈴姫
珀伶は黙って聞いていたが、苦しそうに顔を歪めて視線を下げた。
「それは……わたしと敵対するということか」
「……」
香蘭はなんとも答えることができなかった。
敵対しないといえば嘘であるし、するとはいいたくない。
珀伶を敵にまわすなんて、できればしたくないことだ。
何と言ったらいいのかわからなくて、香蘭はただ視線を落とした。
そんな香蘭の様子を苦しそうに見つめていた珀伶が、静かに口を開いた。
「わたしはただ香蘭に会いに来たわけじゃない…。巫女を捕える役目を負い、お前を探していた」
「お兄様…?」
「お前が巫女であると、その役目を果たすためにわたしと敵対するというのなら…」
珀伶が顔を上げ、香蘭ははっとした。
その瞳は怒りに満ちていて、優しい藍色の瞳はどこにもなかった。
思わず後退すると、珀伶の後ろで控えていた兵士達がさっと香蘭を取り囲んだ。
逃げ場を失った香蘭を、珀伶は顎で示した。
「捕えよ」