鈴姫
「大人しく言うことを聞けばいいものを。さあ、見せておやり」
宝焔が横たわるハルに手をかざすと、ハルは鏡の姿に戻ってしまった。
布も何もかかっていない、さらされた鏡面に、香蘭の姿が直に映った。
「ううっ」
「香蘭!」
頭がくらくらとして、香蘭は床に座り込んでしまった。
顔色が悪くなった香蘭を支え得ながら、憂焔は宝焔を睨みつけた。
「お前、何したんだよ!」
「何も?勝手にその女が力に引っ張られているだけだ」
とうとう香蘭が気を失い、鏡面が光を放った。
眩しさに目がくらみ、憂焔は目を閉じた。
だんだん光が弱まってきて、目を凝らして鏡を見ると、鏡に何かが映し出されていた。
「これは…」
鏡の中に、一人の女性の姿が浮かびあがっていた。
美しいその女性は、憂いを湛えた表情でどこか遠くを見ている。
「彼女は《桜姫》。五百年前の、巫女だよ――」