鈴姫
「いいかい秋蛍、よくお聞き」
老婆は人差し指をたてて、幼いこどもとしっかりと目をあわせた。
「お前は能力を見込まれたんだよ。これからは、桜姫さまのもとで力を磨くんだ。頑張るんだよ」
「……」
秋蛍は口を尖らせたまま、迎えの男に手を引っ張られ、老婆を振り返りながら小さな家をあとにした。
何日も歩かされ、足にはいくつもまめができ、痛いのを通り越して感覚がなくなってきた頃、ようやくある場所にたどり着いた。
そこは見たこともないほど大きな屋敷で、秋蛍は目をまんまるにして屋敷を凝視した。
秋蛍の背丈の何倍もある門をくぐりぬけて中に入っていくと、こどもの声が聞こえた。
それも一人なんかではない、大勢の。
こどもたちは追いかけっこをしたり、木に登ったりして好き好きに遊んでいたが、秋蛍の姿を見つけると一斉に秋蛍のまわりに集まってきた。
「こんにちは。あら、可愛い。ずいぶん小さいのね」
「それだけ才能があるってことだろ。うらやましいよ」
「よろしくね」
次々伸びてくる手に怯んでいると、秋蛍をここまで連れてきた男がこどもたちを追い払った。
「だめだめ。今から桜姫さまにご挨拶に行くんだから、邪魔をするんじゃないよ」
「ええー、けち」