鈴姫
それから数年が経ち、四人は随分と成長した。
それでも秋蛍は一番背が低く、しょっちゅうそのことで瑠璃にからかわれるのは変わっていなかった。
そして桜姫は、それこそ花の咲くようにさらに美しく成長した。
髪は清流のように長く艶やか、肌は白粉を塗らずとも白く陶器のよう。
その美貌は、近隣国にも知れ渡るほどだった。
だが、その成長は桜姫がもういつでも嫁げるということの証。
その日は近い。
月に一度の自由が与えられる日、四人は屋敷の隅の小さな池のささやかな東屋で池を眺めて過ごした。
「もうすぐね」
瑠璃が桜姫に微笑みかける。
桜姫はええ、と瑠璃に返した。
すると瑠璃は微笑みから一変して、不満そうに口を尖らせた。
「さみしいわ」
桜姫は困ったように眉を下げ、瑠璃にお茶を差し出した。
「でも、すぐに瑠璃も王宮へ上がるのでしょう?」
「桜姫が嫁いだ一週間後にね。それだって私にしたら長いわ。ずっと一緒に暮らしてきたのに、一週間も離れちゃうだなんて」
「俺たちと離れることはさみしくないわけだ」
お茶を飲みながら嘆く瑠璃を見て、昭遊が茶化す。
瑠璃はお茶でむせながら、昭遊の背中を叩いた。
「やだぁ、何言ってるのよさみしいわよ。でも、桜姫が一番好きなの」
そんな二人を秋蛍が白い目で見る。桜姫が、くすっと笑った。
「少しの間離れてしまうけど、皆また一緒に過ごせるわ」
「そうだなー。俺も一年後には王宮へ行くしな」
桜姫の言葉に昭遊が同意する。
彼も登用試験に合格していたが、王宮へ上がるのは一年間の留学の後となっていた。