鈴姫
こうして桜姫が即位し、数日が経ったある日のことだった。
香蘭は桜姫についていったり秋蛍についていったりしながら、王宮の様子を窺っていて、この日は桜姫についていた。
誰についていくかは香蘭が選べるわけでもなく、体が勝手に引っ張られていくので、仕方なしについていくのがほとんどだった。
桜姫が瑠璃に用があって瑠璃の部屋を訪ねると、応答がない。
留守なのだろうかと思いながら、桜姫がそっと開けた扉を覗き込むと、香蘭の目にとんでもないものが飛び込んできた。
「瑠璃!?」
血まみれで倒れている瑠璃を、桜姫が半狂乱になりながら抱き抱えた。
「瑠璃!瑠璃!しっかりして!」
桜姫の声を聞きつけた秋蛍が部屋に飛び込んできて、部屋の惨状に息を飲み立ち尽くしていると、昭遊もやってきて瑠璃の体にそっと手を当てた。
「だめだ。もうこと切れている」
「そんな…、どうして。一体誰がこんなことを?」
涙をぽろぽろ流しながら桜姫が嘆くと、昭遊は神妙な声で姫に告げた。
「…三官を殺すということは、この国の均衡を崩すということです」
桜姫は血の気のなくなった顔をさらに青くし、瑠璃の亡骸をぎゅっと抱きしめると、彼女を床にそっと寝かせた。
そして立ち上がり、ふらついたところを秋蛍が支えた。
桜姫は決意の表情で、二人を見つめた。