鈴姫
「わたくしはこの国を守りますわ。二人とも、協力してくださいませ」
鈴姫に、秋蛍が反論する。
「守るって。どうするつもりなんだ?」
「誰がこの国を陥れようとしているか探り出します。そして阻止しますわ」
桜姫は秋蛍の腕からそっと離れ、秋蛍と昭遊の二人をじっと見た。
二人が頷いてくれるのを待っているかのように。
「そんな甘い考え…」
「承知しました。姫様」
秋蛍の隣で、昭遊が桜姫に傅き、秋蛍は驚きに目を見開いた。
「ありがとう、昭遊。秋蛍は…」
桜姫が秋蛍の方を向き、秋蛍はむっと口をとがらせた。
「好きにしろ。俺はお前を守るだけだ」
桜姫が口を開きかけたのを無視して、秋蛍は瑠璃を抱きかかえると背中を向けて部屋を出て行った。
冷たくなった瑠璃の頬に触れ、秋蛍は表情を曇らせた。
嫌な風が王宮中の木々を揺らしていく。
まるでよくないことが起こることを知らせるかのように。