鈴姫
昭遊は黙って、ただ静かに笑みを浮かべていた。
香蘭はその笑みにぞっとした。
欲に飲み込まれた獣のような恐ろしさを感じた。
「桜姫を殺して…お前を殺す。そうすれば、この国で宝を扱えるほどの力を持つのは俺だけになり…」
昭遊はそこで、正気ではない笑みを満面に浮かべた。
「そしてこの国は俺のものになる」
「ふざけるな。この国を乗っ取るために、瑠璃も桜姫も殺したのか」
「そうだ。邪魔だったからな」
昭遊の、淡々としたもの言いに秋蛍の怒りが増すのを香蘭は感じた。
「お前…、瑠璃と恋仲だったろう」
「隙ができる、そのためだ」
昭遊は鼻で笑って、指先を嫌悪に顔を歪めている秋蛍に向けた。
「あとは秋蛍、お前が死んでくれるだけでいい。あとは俺に――任せておけ」
濃い、甘い香りが急に部屋に立ち込めてきた。少し香りを嗅いでしまい、くらりと眩暈を起こし、秋蛍はたえきれずに膝をついた。
香蘭は秋蛍のすぐ側で、どうすることもできずに狼狽えた。