鈴姫
王宮全体が火に包まれ、炎が赤々と夜の闇に浮かび上がっていた。
人々の悲鳴と嘆きが、どこからか聞こえてくる。
秋蛍は黙ってその光景を見ていたが、やがて塔の中に入っていった。
香蘭は秋蛍のあとを引っ張られるようにしてついていく。
秋蛍は最上階に戻り、短刀を手に何やら考えこんでいるようだ。
建物の焼けた匂いがあたりを包んでいる。
灯りも何もともさない部屋の中で、秋蛍はただひたすらに短刀と向き合っていた。
香蘭は嫌な気がしてならなかった。
死の影が忍び寄っているのを、感じずにはいられない。
すると、部屋の隅がぽおっと明るくなった。
秋蛍も香蘭も、驚いてそちらを見ると、ひとりの少女が無表情に立っていた。
銀色の美しい髪。
ハルだと、香蘭はすぐにわかった。
「お前は…」
「あたしは‘願いの鏡’。あなたの最期を見届けるわ」