鈴姫


「まずいことが起こった。鈴王がこちらにやってきている。どうも私たちの味方ではない様子だ」


「お父様が……?」


わざわざ鈴王自らがお出ましになるとは一体どういうことなのだろうか。

それも珀伶の味方ではないなんて。


二人の会話を聞いていた憂焔は、宝焔に向き直った。


「こいつは俺がやる。香蘭たちは鈴王を止めてこい」


ここにくる途中で拾ってきたらしい憂焔の剣を秋蛍が放り投げ、憂焔は鞘から引き抜いた。


「それはだめだよ兄上。ちゃんとしてくれなきゃ困る」


「ちゃんと?」


「そうだよ。兄上は香壺の主。昭遊の魂のかけらを持っているのは兄上なんだ。香壺が目覚めたのがその証。昭遊を殺したのはそこにいる男だよ?ちゃんと恨みは果たさなきゃ」


「昭遊?」


「知らないとは言わせないよ、秋蛍?」


わけがわからないというように眉を顰めた憂焔から秋蛍に視線を移し、宝焔は口角をあげた。


秋蛍は黙って宝焔を見ている。

< 222 / 277 >

この作品をシェア

pagetop