鈴姫
「兄上……ずっと死んでほしいと思っていた。兄上が死ななきゃ香壺を操るための力が手に入らないからね。でも兄上もコマのひとつだから、今日まで仲良くしてあげただけ」
そして再び秋蛍に目を向け、にっこりと笑った。
「秋蛍も兄上を憎く思っているよね?大切なお姫様を殺したやつが生まれ変わって、妻に迎えようとしてる。おまけには今度は守るだなんて言っちゃって、ほんと笑えちゃうよね」
秋蛍は相変わらず黙ったままで、香蘭は胸に手を当てて秋蛍を見守った。
憂焔が剣を持つ手に力を込めると、宝焔はすっと憂焔に向けて手を伸ばした。
「兄上の中に眠ってる昭遊の魂は、そいつのこと、殺したいって思ってるよ」
「!?」
いきなり憂焔が秋蛍に刃を向けた。瞬時に気づいた秋蛍は避けたが、憂焔の動きは止まらない。
秋蛍のあとを追うように剣を振り回し、秋蛍の衣の袖を切り裂いた。
どういうことかと息を飲んで香蘭が憂焔を見ると、憂焔は戸惑った顔をして剣を振るっている。
「な、体が勝手に!」
「兄上はやっぱり弱い。それなのに皇太子だなんて……反吐がでる」