鈴姫
「あなたの命を、この子に捧げてくださいませ」
「どういうことだ?」
「わたくしの命と引き換えに封印できても、そのままでは魔物に対抗することはできません。
あなたもどうかこの子を守りたければ時が来たときにその刀に込められた憎しみを解放してくださいませ」
「……」
鈴王は、すぐに封印を解く方法を察した。
刀の封印を解く方法は、ひとつ。
その刀で親を殺すこと。
「あなたを一族の問題に巻き込んだうえに、とても辛い役目をお任せすることが心苦しくて仕方ありません」
月姫は涙を流し、袖で顔を覆った。
鈴帝は肩を震わせて泣く月姫の細い体に腕をまわし、髪を撫でた。
「辛いものか。大事な娘のためだ。必ずやその任を務め果たすことを約束する」
月姫の腕の中から赤子を取り上げ、そっと自分の腕の中におさめた。
何も知らない赤子は、つぶらな目で鈴帝を見上げている。
「いつか来る日にお前が辛くないよう、遠ざけるわたしを許しておくれ。父上はお前を愛しているよ、香蘭」
小さな額に、そっと口づけた。