鈴姫
やがて食道を通り、胃と思しき場所まで転がり落ちた。
唾液でべちゃべちゃの髪を掻き分け辺りを見ると、当然のことながら消化されずに残っている人間の残骸でいっぱいだった。
込み上げてくる吐き気を抑えながら、香蘭は上を振り仰ぐ。
できることが、見つかった。
彼の力になれることが……
香蘭は手鏡を取り出し、大きく息を吸って鏡を覗きこんだ。
すぐに鏡の中に入り込む。
暗闇の中を走り回り、ハルの姿を懸命に探した。
「ハル、ハル……!」
香蘭の声に応えるように、どこからかハルの声が聞こえた。
それはだんだん大きくなり、香蘭は声の聞こえるほうへ駆けだした。
ハルの姿が前方に見えてきて、香蘭はほっと息をつく。
「リン!」
ハルは香蘭に抱きつき、心配そうに見上げてきた。
「大丈夫?今、どうなっているの?」
香蘭は少し困った顔をして、あのね、と切り出した。
「わたし、食べられてしまったの」
「ええ!?」
「今、魔物のお腹の中にいるのよ」
「ど、どうするの?このままじゃリン、溶けちゃうよ!」