鈴姫
ハルは焦って、おたおたと手足を動かした。
そんな彼女を落ち着かせるために、ハルの肩に両手を置いて、目を合わせた。
「聞いて、ハル。今は食べられてよかったと思ってるの。魔物を倒すための算段がついたわ」
ハルは不可解そうに香蘭を見ているが、香蘭は構わずに続けた。
「結界が張ってあったわ。あれのせいで秋蛍さまは魔物に近づけない。だけど、わたしは今魔物の中よ。中からなら、結界を破るのは難しくない」
香蘭の話を聞き、ハルはぱっと顔を明るくした。
どうやら香蘭が言いたいことが伝わったらしい。
「任せといて。すぐにトオルとカオルを引っ張ってくる」
くるっと踵を返してどこかへ消えてしまったかと思うと、次の瞬間には二人を連れて目の前にいた。
トオルとカオルは状況が飲み込めずに戸惑っている。
香蘭がもう一度二人に説明すると、ハルと同じように、二人は顔を明るくした。
香蘭は三人に向けて、にこっと笑った。
「それじゃ、行きましょう。わたしの体が溶けてしまう前に」