鈴姫
香蘭は鈴国から抜け出すことができて、清々していた。
王が喜ぶのは気に食わなかったけれど、それよりも、もう誰も王族であるのに自分に今までのようないじわるをすることはないであろうことが嬉しかった。
ただひとつ心残りなのは、兄、珀伶のことである。
お別れもいえないままに、国を出てきてしまった。
大好きな兄。
自分を助け、可愛がってくれた唯一の人。
大丈夫、と香蘭は自分に言い聞かせる。
大丈夫よ、またきっと会えるわ。
この婚姻で香国と鈴国は同盟を結ぶのだから、お兄様の機嫌がよくなれば、きっと会いにきてくださるはず。
お兄様の鈴も、私はもっているのだから。
香蘭は髪につけた鈴に手をやった。
金色の鈴は、珀伶が贈ってくれた大切な鈴。
この鈴にどんな約束が込められているのか、香蘭には検討もつかないけれど。