鈴姫
「その者を宮へ連れよ。殺してはならぬぞ」
女性の言葉に、二人を取り囲んでいた者たちが香蘭の腕を強く引っ張った。
「嫌! 離して! 憂焔!」
腕を引っ張られながらも、憂焔が他の兵士に連れていかれるのを見て、香蘭は悲鳴をあげた。
「その人を殺さないで! 離して、離してよ!」
香蘭はまだ手にしていた短刀を振り回し、抵抗しようとした。
兵士が怯み、手を離した隙に香蘭は憂焔を助けようと地面を蹴った。
目の端で、何かが光った。
香蘭ははっとしてそちらを見てしまった。
一人の男が、何かを持って香蘭に向けていた。
眩い光は、その何かから発せられている。
あれは―――
香蘭はそれが何であるか理解したが、そこで突然くらりと眩暈が襲った。
今までのようなものではなく、経験したことのないひどいものだ。
どうして、今なの……!
もう自分がどうやって立っているのかもわからず、頭を押さえて踏ん張った。
じゃり、と踏みしめた砂が音を立てる。
香蘭は必死で意識を保とうとしたが、あまりの眩暈に抗えず、努力も虚しくついに意識を手放してしまった。