鈴姫
「おや、やっとお目覚めか?お前は寝坊助なのだな」
涼やかな声に、香蘭は目を開けた。香蘭の目の前に、あの女性が立っていた。
香蘭は体を起こしたものの、口を開くこともなくただ黙って彼女を見つめた。
彼女はそれを見て、憐れむように眉を下げた。
「お前の鎖を解いてやりたいのはやまやまだが、お前は刀を使えるし、何をするかわからぬからな。許せ」
そう言って、寝台の隅に腰を下ろした。
香蘭はそれにも何の反応も示さず、ぼんやりとどこかを見ていた。
女性は香蘭が何に気を落としているか気づいたらしく、笑って香蘭の肩を叩いた。
「安心せよ。あの男を殺してはいない」
その言葉に香蘭は目をまるくし、勢いよく体を起こした。
殺していない?
「生きて、いるの……?」
香蘭の様子に彼女は微笑み、香蘭の髪を優しく梳いた。
「生きておる。ただ、傷が深くて、当分目は覚まさないだろう」
「ああ、生きてるのね、よかった……」
香蘭は胸に手を当て、目を伏せた。
彼は、生きている。