鈴姫
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「いやいや、これは華京王女。相変わらずお美しいのお」
「戯言はいらぬ。何の用で参ったのだ」
香の国王がにやにやしながら華京を眺めまわすのを、華京は不愉快を露わに睨みつけた。
すると香王は悲しそうに袖を目元に当て、泣く真似事をした。
「おお、王女は氷のように冷たいのぅ。今回は、ちと頼みがあって参ったというに」
「頼み?」
「そうじゃ。王女には我等に襲いかからんとする不穏な影が見えはせぬか?」
「はっきり申せ。年寄りは回り道が多いから面倒だ」
香王は年上である自分にも畏れることなく歯に衣着せぬ物言いですぱすぱとかえす華京に、面白そうにくっくと笑った。
笑いながら扇を取り出し、ゆっくりと開いた。
「……鈴の国よ。あの国は近頃、不穏な動きをしておるとは思わぬか?」
「そうか?」
華京は艶やかに紅を塗った口元に指をやり、思案げに宙を見上げた。
「裏でこそこそ軍事力を強化しているようじゃ。いつ鈴国が鏡や香に攻めいってくるかわからぬぞ?」
「そのときはそのとき。こちらも応戦するのみだ」
「まあ、待て待て……。奇襲をかけられたらどうするおつもりじゃ?応戦するとて、手痛い被害が出よう」
そこで扇を自分の口元にあてがい、華京のほうへと身を乗り出した。
空気を含んだ声量を落とした声で、華京の耳元に囁く。