鈴姫
「どうじゃ……。わしと、手を組まぬか?」
「手を?」
「わしは鈴に攻め入ろうと思っておる。」
「……」
華京は瞠目し、香王をじっと見つめた。
香王は華京の様子を気にすることもなく、困ったように眉をさげた。
「そのための策を練っているのだが、やっかいな大臣がいてね。あやつはなかなか人望も厚く、このままでは策を進めることができん。そこであなた様の出番じゃ」
ぱたぱたと扇子を仰ぎながら、にやりと華京に歯を見せた。
薄気味悪いと感じながら、華京は香王から少し身を引いた。
「その大臣を鈴国へ使いに出す。そこをな……、狙うてやつを消してはもらえまいかのお」
「……消したくば、自分で消せばよかろう。」
「裏切らないという確証を得たいのだよ」
「裏切り?」
「そうじゃ。香国は第一王子を人質として鏡に差し出そう。これで我等は鏡国を裏切りはせぬ。そのかわり、鏡国は証として頼みを引き受けよ」
「第一王子とは!そのような次期国王となるものを鏡に預けるというのか」
信じられないとばかりに首を振る華京をよそに、香王は落ち着いた様子で頷いた。
パチ、と扇子を閉じ、立ち上がる。
「これが我等の決意じゃ。よい返事を待っておる」