鈴姫
「そういうわけで、鏡国は香国と同盟を結び、鈴を倒すべく我等は準備を進めていたのだが……」
華京はきゅっと眉尻をあげ、怒りを露わに机を蹴飛ばした。
「あのタヌキジジイ!私を小娘とみておったか!まんまと嵌められたことが悔しくてたまらぬ!」
香蘭は華京が顔を真っ赤にして腹を立てているのを目の当たりにして、戸惑うしかなかった。
美しく聡明に見えた王女が、このように簡単に感情を露わにしているのは不思議でたまらなかった。
しかし、戸惑いつつも華京の言葉が気になり、文机を蹴り続ける華京に恐る恐る声をかけた。
「あの、華京様…。嵌められた、とは?」
「ん? ……ああ、そのことについて話していなかったな」
華京は足をとめ、少し乱れた袂を美しい手つきで整えてから口を開いた。
「そなたたちの馬車を襲ったとき…、我等は、あの馬車に乗っているのは大臣であると聞いていた。まさか香の王子と鈴の姫君だとは思っていなかったのだ」