鈴姫
「……なぜだ。なぜ、鈴国の姫が鏡の力を持っている?」
「鏡の……力?」
秋蛍はふらつく香蘭のもとに歩み寄ったかと思うと、鏡を手にしたままの香蘭の腕を強く掴んだ。
「お前は鏡を見ると具合が悪くなる。そうだろう?」
確認するように黄緑色の瞳に顔を覗き込まれ、そういえば、と香蘭は記憶を探った。
伯玲といたときも、手鏡をみていたし、倒れたときは化粧台の鏡の掛け布を外したときだった。
香蘭の様子に、秋蛍はそうであると確信したようだった。
「お前は‘かがみ’の能力を持っている。どういうわけかな」
「‘かがみ’……?」
そう呟き、手にしている鏡に視線を落とそうとすると、秋蛍に制された。
秋蛍を見上げると、彼は首を横に振った。
「お前はまだ鏡の流れに耐えきれていない。暫くは鏡を使わないことだ」
「流れ?それは何?」
香蘭が尋ねると、秋蛍はようやく腕を離した。
「鏡は能力者の気に反応して目を覚ます。目を覚ますと、鏡はある流れを作り出す……」
香蘭の手にあった鏡を取り上げ、彼は鏡を覗き込んだ。