鈴姫


「……なぜだ。なぜ、鈴国の姫が鏡の力を持っている?」


「鏡の……力?」


秋蛍はふらつく香蘭のもとに歩み寄ったかと思うと、鏡を手にしたままの香蘭の腕を強く掴んだ。


「お前は鏡を見ると具合が悪くなる。そうだろう?」


確認するように黄緑色の瞳に顔を覗き込まれ、そういえば、と香蘭は記憶を探った。


伯玲といたときも、手鏡をみていたし、倒れたときは化粧台の鏡の掛け布を外したときだった。


香蘭の様子に、秋蛍はそうであると確信したようだった。


「お前は‘かがみ’の能力を持っている。どういうわけかな」


「‘かがみ’……?」


そう呟き、手にしている鏡に視線を落とそうとすると、秋蛍に制された。

秋蛍を見上げると、彼は首を横に振った。


「お前はまだ鏡の流れに耐えきれていない。暫くは鏡を使わないことだ」


「流れ?それは何?」


香蘭が尋ねると、秋蛍はようやく腕を離した。


「鏡は能力者の気に反応して目を覚ます。目を覚ますと、鏡はある流れを作り出す……」


香蘭の手にあった鏡を取り上げ、彼は鏡を覗き込んだ。



< 48 / 277 >

この作品をシェア

pagetop