鈴姫
男と間違われてもいいくらいの髪の長さだったのに、こうすると女の子であると一目でわかるようになるから不思議だ。
可愛らしく装飾された自分の髪に、香蘭はもう悲しいなどとは思わなかった。
「ありがとう、珀伶兄様。この鈴、大切にする」
香蘭は頬を染めて目を輝かせ、珀伶は妹を穏やかな目で見つめた。
「香蘭、お前が幸せになる日が来ればいいのだが」
珀伶の呟くような声に、香蘭は首を振った。
「私は幸せよ」
にこっと微笑んでみせる香蘭に珀伶は胸を痛めたものの、何も言うことはできなかった。
香蘭は嬉しそうにまだ手鏡を覗き込んでいる。
その綻んだ表情を見つめながら、珀伶は腕組みをして側にあった木にもたれた。
この子が幸せになることはきっとない――
昨夜父である王に聞いた話を思い出しながら、珀伶は唇を噛んだ。
王の思惑どおりにならないように、自分がしっかりしなくては。