鈴姫
「国王様!」
伯玲が鈴王に詰め寄っていたまさにそのとき、一人の兵士が転がり込むように部屋に入ってきた。
兵士は汗を浮かべて息も切れぎれに、膝をついて奏上した。
「申し上げます……!憂焔皇子と香蘭姫様の馬車が、鏡国の手の者に襲われました!」
「なっ……、どういうことだそれは!」
伯玲は血相を変えて兵士の襟首を掴んだ。
鈴王は黙って、ただ兵士を見つめている。
「ああ、あ、伯玲様……!わたくしも詳しくは存じ上げないのですが……」
兵士はおろおろしながら首を振った。
「国境辺りを通りかかった商人が、馬車を見つけまして。護衛も付き人も、皆殺されていたとのことでございます」
「そんな、それではまさか……!」
「それが、馬車の中には誰もおらず、香の王子も姫様も見つかってはいないのです」