鈴姫


「華京様、守りは今までどおり俺が努めます。鎮めをリンに任せるのがいいかと。鏡はリンを側に置いておきたいようですし、巫女の役目を、鈴にあたえては」


「巫女……、そういえば昔、そういう役目の女性がいたと聞いたな。秋蛍、お前の父から何か聞いてはおらぬのか」


「……巫女は死んだと聞いています。だから鎮めも我等一族が行うようになったのだ……と、言っていたような言っていなかったような」


「……。まあ、昔のことだしな」


華京は昔にいた巫女の話は諦めて、香蘭に向き直った。


香蘭は今の話を理解できず、ただ黙って華京と目を合わせた。


「では、香蘭。お前に鏡の鎮めを命ずる。そんなに難しいことではない……。鏡の気分次第によるけれどね」


くす、と最後に笑って、椅子から立ち上がった。


「私はいろいろと忙しいのでもう戻る。またな、香蘭。あとは頼んだぞ、秋蛍」


「はい。お任せを」


秋蛍が頭を下げて扉を開けると、華京は香蘭にもう一度笑みを向けてから部屋を出て行った。




< 62 / 277 >

この作品をシェア

pagetop