鈴姫



「ごめん……、香蘭、ごめん」


涙を流す香蘭の肩をそっと抱くと、彼女は嗚咽を漏らした。


「ひどいわ。私がどれだけ心配していたと思ってるの……」


「ん……」


謝るかわりに香蘭を抱く腕に力をいれた。

彼女は少し、細くなったように感じる。


香蘭も憂焔の背中に手を回し、背中をそっとさすった。


そこに何の異物もないことに、香蘭はほっと息を吐いた。



しばらく二人は無言で抱き合い、部屋には静かに時が流れ、香蘭のすすり泣きの声だけが響いていた。

どちらともなく腕を緩めるまで、それは続いていた。



やがて二人は体を離し、照れたように笑い合ってから、並んで寝台に座った。


「鏡の王女だと名乗る女性から、大体のことは聞いた」


憂焔はそう言ってから、ふう、と息を吐いた。


「まんまとあいつらにしてやられたわけだな。まさかこんな形で殺そうとするとは思わなかった」


「……そうね。だけど、あんまり傷ついていないの。こうなったことに、悲しいとか、裏切られたとか感じないのが不思議だわ」


「俺もだよ。全く、予想の範囲内だ。まさかとは思ったけどね」




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