鈴姫
秋蛍は二人のやりとりを面白そうに見守っていたが、様子がつまらなくなったのか口を挟んできた。
「それでも、まだ迷っているんだろう?」
「………」
秋蛍の言葉に香蘭は手を止めて、瞳を泳がせた。
「迷いのあるものは信用できない。逃がしてやろうか?二人で逃げればいい。追手が来ないとは限らないけどな」
見下したように、それでいて楽しげに笑う秋蛍に怒りが込み上げ、憂焔は思わず立ち上がった。
「お前、いい加減に」
「やめてよ秋蛍!リンをいじめたらわたしが許さないんだから!」
殴りかかろうとした憂焔の前に、秋蛍からかばうように一人の少女が手を広げて飛び出してきた。
憂焔は殴ろうとしていたのに逆にかばわれて、手を下ろすこともできず固まったままだ。
「なんでお前がここに」
秋蛍はといえば突然現れた少女に驚きながら、少しだけ後ずさって嫌そうな顔をしている。
少女はふん、と銀色の髪を揺らした。
「扉が開いていたから入ってきただけだよ。さっきから見てたけど、あんた性格悪いよ!」
「お前にだけは言われたくない……」
「なんだって?」