鈴姫
やっと手を下ろした憂焔の動きを感じとり、じっと俯いていた香蘭が、顔をあげた。
そして目に入った少女に、はっとした。
後ろ姿だけれども、彼女の銀色の髪に、さっき食い入るように秋蛍を見ていた少女だとわかる。
「秋蛍はいつもリンをいじめる。あんたがリンをつれてここへ入っていくのを見たから、またいじめるんじゃないかと思って見張ってたんだよ。そしたら案の定だ、あんたこどもだね」
「少なくともお前よりは大人だよ」
「何言ってるの。わたしのほうが長く生きて……」
そこで少女が香蘭の方を振り返った。
香蘭と目があい、二人ともそのまましばらく見つめあった。
美しい蒼の少女の瞳に、香蘭はなぜかひどく懐かしいような、嬉しいような、悲しいような、不思議な感覚に襲われた。
だから少女に飛びつかれるまで、香蘭は身動きもせず少女を見つめていた。
「リン!会いたかった!」
そう言いながら嬉しそうに首に腕を回してくる少女に戸惑いながら、香蘭は首を横に振った。