鈴姫
気を取り直した憂焔が、少女の銀色の髪を不思議そうに見ながら言うと、少女はくるりと憂焔の方を振り返った。
「わたしの名前はハル。あんたは香の人間ね。カオルの匂いがする」
「カオル?」
「あんたの国にいる、わたしの友達の名前だよ」
そこで少しだけ、彼女は悲しそうな顔をしたような気がした。
「きれいな銀色の香壺(こうご)なの。見たことない?」
ハルに尋ねられ、憂焔はわけがわからないという顔をして首を傾げた。
「香壺……?友達か、それ?」
「友達だよ。とっても仲がよかったの、三人でよく遊んだんだ」
ハルが懐かしそうに話すのを聞きながら、香蘭は考え込んだ。
香壺、という言葉を最近耳にした。あれは確か……。
「もしかして、あなたは鏡なの?願いの鏡?」
香蘭が言うと、ハルはぱっと顔を輝かせて大きく頷いた。
窓から差し込んだ光のせいで、銀の髪が眩い煌めきを放った。
「そうだよ!さすがリンだね。わたしは“願いの鏡”の化身。今はヒトガタだからハル」
「そうなのね!それじゃあ、毎日お話を聞いてくれてるのもハルなの?」
「うん」