鈴姫
二人が急に盛り上がりだした隣で、憂焔は全くついていけずに頭が痛くなりそうだった。
そんな憂焔に気付いた香蘭が、わけがわからないでいる憂焔に三宝の説明をしてやると、彼はわかったのかわかっていないのか、とりあえず頷いていた。
「じゃあ、俺の国にある香壺っていうのも、もしかたら歩き回ったり喋ったりしてたのかな」
「してたと思うな。でもカオルはあんまり話さないから、黙ってうろうろしてるだけかもね」
カオルのことを思い出しているのか、ハルはくすっと笑った。
かわいらしいハルの様子に香蘭と憂焔が目をあわせて微笑みあっていると。
「昔話もほどほどにしないと、年齢がばれるぞ」
急に聞こえてきた声に、三人ともびくりとしてそちらを向くと、秋蛍が自分が放り投げていた鍵を手に机の横に立っていた。
秋蛍の登場に、ハルが心底嫌そうに反応した。
「あんた帰ったんじゃなかったの」
秋蛍はむっとしながらも、香蘭の腕をつかんで寝台から立たせた。
「リンを持って帰るのを忘れていたんだ。行くぞ鈴、華京様がお呼びだ」