鈴姫
「彼の巫女の名は、笙鈴。鏡は彼女をリンと呼んでいました」
「………」
華京にじっと見つめられ、香蘭は体を緊張で固くした。
「もし、それが本当なら……」
華京は口元に手をやり、考え込むようにしてから秋蛍を振りかえった。
「香蘭を宮から出すわけにはいかぬな」
香蘭は急いで首を横に振った。
「何をおっしゃるんですか。もとより出してもらうつもりはありません」
「その意味とは少し違う。香蘭を守らなくてはならなくなったのだ」
「守る?」
どういうことだろうかと香蘭は首を傾げた。
香蘭は鏡を鎮めるためにここにいるのだけれど、守るほど重要な人材ではないのではないだろうか。
敵方の姫でもあったのに。