鈴姫
「そう。香蘭は笙鈴という巫女の力を受け継いでいるかもしれない。もしこのことが世間に知れれば、命すら危うい」
「どうしてですか?」
「巫女の力を継いでいるということは、三国を統べる強力な道具にもなるということだよ」
三国を統べる。
香蘭は、三つの国が前は一つの国であったと華京が話してくれたことを思い出した。
華京はくるりと体の向きを変え、玉座の方にゆっくり歩きだした。
「昔、三国が一つの国であったとき……、三つの宝が国を支え、豊かにしてきた。しかし王位争いにより宝の奪い合いが行われ、国は三つにわかれた」
香蘭は黙って、離れていく華京の背中を目で追った。
玉座の前まで来ると、華京は白く細い指先で玉座の背を撫でた。
「一つの国であったとき、三つの宝を守り鎮める巫女がいた。つまり、巫女を手にすれば宝の力を増すこともできる。残りの二国を従えることも、難しくないはずだ」
「つまり華京様も、私を使ってそうしたいのですね」